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しろうのブログ

フィクションの話

『鉄腕アトム』:「異端の狂気」の話

月刊ヒーローズで連載してる鉄腕アトムの前日譚「アトム・ザ・ビギニング」が面白いなあと思っています。 「アトム・ザ・ビギニング」は「鉄腕アトム」時代から2~30年前の近未来、若き日の天馬博士とお茶の水博士が開発した自律型人工知能を搭載した試作…

『リュウマのガゴウ』:現在ありきの過去の話

現在を起点に進んでいた物語の時系列がどこかのタイミングで過去へと切り替わり、主人公や物語世界の昔話が始まる展開がとても好きです。 るろうに剣心の人誅編であったり、ワンピースの主要キャラクターの生い立ち、ファンタジックチルドレンの惑星ギリシア…

『たそがれたかこ』の話

入江喜和先生の「たそがれたかこ」という漫画が大変良かったのでその感想を書きます。 主人公の片岡隆子は45歳バツイチの女性で、アパートの大家をしている母と二人暮しをしています。日中は食堂でサラダなんかを作るパートに出ていて、家に帰ってからは老い…

『モッシュピット』:漫画の中の音楽の話

『モッシュピット』という漫画が大変面白くて好きなのでその話をするのと、漫画の中で演奏される音楽について、思っていることなどを書きます。 『モッシュピット』という漫画 『モッシュピット』は自分に生き方に疑問を抱いていた主人公たちが音楽と出会っ…

『エースをねらえ!』:お蝶夫人はものすごくいい人だ

山本鈴美香『エースをねらえ!』は、平凡なテニス部員だったヒロイン・岡ひろみが鬼コーチ・宗方仁にその才能を見出され、凄まじいシゴキを乗り越えて世界レベルのテニス選手へと成長していく熱血スポーツ漫画です。先輩部員からのいびりや過酷なシゴキ、試…

カラスマタスク『ノー・ガンズ・ライフ』:頼み事の自分勝手さを呑みこむ話

日々生きていくうえでは、周りからくるさまざまな頼み事もいちいち断るのが面倒だったり相手の意志を確認するのが面倒だったり、中身を精査するのが面倒だったりで、何となく引き受けてしまう事が多いです。その少しの面倒くさがりのせいで、依頼の中に含ま…

メイドインアビス:子供のシリアスと経験の時差

他人がどれだけ物事を真剣に考えているかって、なかなか伝わってこないですよね。どれだけやる気があっても、その先に待ち構える困難問題を乗り越えられる気力・覚悟を持っているのか。他人からすればそれらは全て、結果からしか判断できないものだと思いま…

『寿司ガール』の話

安田弘之先生の漫画『寿司ガール』は、寿司が擬人化する話です。 寿司ガールとはその名の通り、寿司ネタが擬人化した存在です。大きさは手乗りサイズで頭には生の寿司ネタを乗せている妖精のような存在です。しかし、その本質はやはり一貫の寿司であり、その…

『私という猫』:飼い猫と野良猫と人とケダモノ

猫がそこそこ好きなのですが、飼い猫は当然のこと野良猫と出くわした時にも同じように可愛いものを愛でる感覚で彼らに近づき、多少威嚇されても可愛いもんだと、彼らの生きる世界の険しさや飼い猫とは違う野生を見過ごしていたように思うのです。 飼い猫に抱…

ファンタジー専業主婦の話

ファンタジー世界に登場する専業主婦キャラクターの魅力について、思っていることを書きます。 ファンタジーのリアリティー ファンタジーは、現実とはかけ離れた生態系・文化が定着した異次元の世界であって、非現実・非日常を擬似的に体験できるとてもいい…

『DREA-MER』と一人称のはなし

少年サンデーで今連載中の漫画『DREA-MER~ドリー・マー~』を出しに、一人称に対する自分の考えを書きます。 一人称って難しい 一人称を自分の中で規定するのってすごい難しいことだと思うんですよ。自分のことを、自分で称するってわけわからん行為だと思…

『たそがれメモランダム』と『岸虎次郎短編集』と経験の共有に感じる限界の話

他人と経験・時間を共有するには、いろいろと限界があるなーと感じています。最近読んだ漫画を出しに、その辺のことを書きます。 『たそがれメモランダム』の経験と思い出 月刊スピリッツに連載されている『たそがれメモランダム』は高校生の主人公が放課後…

『女の子が死ぬ話』:私の無責任な後味

柳本光晴先生の『女の子が死ぬ話』は、病弱な薄幸の美少女が高校進学と同時に余命宣告を受けながらも友人にそのことを隠し続け、弱っていく姿を誰にも見られないよう、綺麗な女の子として皆の思い出の中で生きていけるよう、一人で死ぬ話です。 メインの登場…

ホモ漫画の話

最近なんとなく買った漫画が立て続けにホモ漫画で自分の感性大丈夫だろうかと心配になったので、ちゃんと面白く読むこともできるぞいっていう、頭の整理をしておこうと思ってこんな記事を書きます。あくまで漫画の話で、現実世界での同性愛についてどうこう…

『七月の骨』のはなし

吉田聡先生の『七月の骨』は、作者のデビュー前の体験をもとに創作された架空の若者・時田サトシくんが漫画家を目指して悪戦苦闘するさまを描いた漫画です。 この漫画は『湘南爆走族』を作った人間の成功劇ではなく、また何かを作る人の楽しさ・熱さを描いた…

小さい世界の秩序とカバの余談

閉鎖的な共同体の中で人間が生きていくために、共同体が秩序を持って上手く回っていくために、独自の信仰や思い込みが保たれている感じ、しかもそれが外部の人間によって作為的に作り出された環境だったりしたら、すごく面白いなぁって感じる、そんな話です…

サガノヘルマー『BLACK BRAIN』:人体改造と五体満足の基準

サガノヘルマー先生の『BLACK BRAIN』は、肉体を改造し人を超越することに成功した「邪進化人類」と、ヒトの子孫である未来人類ヒテロ・サピエンスたちの戦い、それに挟まれる普通の人間の物語です。 ヒテロサピエンスのエージェント・アガサ森田は、邪進化…

方言と文字による音声積分のはなし

耳掃除をさぼってたせいか、音楽を変な音量で聞いているせいか、最近人の言ってることを一回で聞き取れないってことがよくあります。春から馴染みのない北国に転居したこともあって、年配の方のドギツイ方言が全く理解できずコミュニケーションに支障をきた…

坂ノ睦『あやしや』の日常描写が好きだ

漫画やアニメでは中盤につかの間の休息として、戦いから解放された登場人物たちの素顔が見れる日常回ってやつがよくありますよね。ファンタジーやSFもので常に重苦しい表情を浮かべている登場人物の安らいだ姿、楽しそうにしている様子を見るのはとても楽し…

読切は面白い(2014年)⑥:完

6つ目です。 ナンバーオブザビースト ゲッサン「雨追さん家に行ってみた。」鳴海アミヤ ヤクザの下部組織の下っ端中の下っ端さんがゴミを山中に不法投棄していると、2メートルはあろう戸愚呂弟体型の男性・雨追さんにつかまり「ごみを持ち帰ってください」…

読切は面白い(2014年)⑤

5つ目です。 妊娠モノが多いです。 モーニング「おっぱいありがとう」田島列島 赤ちゃんの頃は男も女もおっぱい好きだったのに、大人になったら女は女のおっぱい吸えないんですよ男は吸えるのに 田島列島先生はこの読切群の後『こどもはわかってあげない』…

読切は面白い(2014年)④

4つ目です。デスピサロ モーニング「アオダモソウル」松崎真風 「アオダモソウル」は毎話一つのポジションに焦点を当てて、そのポジションでの最高のパフォーマンスに全てを賭けるプレイヤーの熱い戦いを描いた、全4話の野球読切です。ピックアップされるポ…

読切は面白い(2014年)③

三つ目、三只眼吽迦羅。 ジャンプSQ「恋は盲目」藤本タツキ 熱血な生徒会長が熱血な副会長と一緒に下校して告白するまでを31ページにわたって描いている、という読切です。 キャラクターデザインはカプコンの私立ジャスティス学園のようで、ギャグのテンポや…

読切は面白い(2014年)②

二つ目の記事です。 アフタヌーン6月号「再来」門野民緒 因習めいた山奥の村に伝わる、山の神を崇める祭りが22年ぶりに開かれる。祭りの夜には住民は家にこもり、山の神が迷わず目的地の神社へと向かえるよう塀で道を作る。腹を空かせて山を下りてきた神に…

読切は面白い(2014年)①

この記事は、今年私が出会った読切を、新人作家さんを、あるいは見知った作家さんとの紙面での再会を記録する、備忘録記事です。 順番は私が読み直した順なので、めっちゃんくっちゃんです。 週刊漫画Times「いつかみんなでピクニック」甲乃称太 16歳の冬に…

『KOKO BE GOOD』という漫画

「あなたは良い人ですか」と聞かれて自信を持って「はい」と答えられる人がどれだけいるのか、「はい」と答えられない人もけっこういるんじゃなかろうかと、そんな感じの話です。 『KOKO BE GOOD』というアメリカンコミックを読みました。 邦題をつけるなら…

『ケンガイ』の白川さんと『エレファント・マン』との乖離

社会性を失った映画オタク白川さんの話 『ケンガイ』という漫画は映画を見ること以外、衣食住も人間関係も恋愛も全く興味を示さない女性・白川さんと、そんな白川さんのことが好きになってしまった普通のイケメン・伊賀くんが仲良くなれそうでなれない、難攻…

食べる音について

吉野家で牛丼を食べる方法は人それぞれで、つゆダク温玉クチャラーもいれば、1時間ぐらいかけてゆっくりもしゃもしゃ食う爺さんもいます。ゆえに、「吉野家の牛丼を食べる音」を一般的なものとしてテンプレ化することはできません。 物を食べる時には必ず音…

ヤマシタトモコの細くて強い『無敵』

肉薄する少女の存在感 ヤマシタトモコ先生の絵は女性向け漫画らしい細く、強く主張しない感じの線で描かれています。しかしこの『運命の女の子』に収録されている『無敵』という短編、そこに出てくる一人の女子高校生の存在感が、その線の細さと不釣り合いな…

『CALVARY』

温厚で敬虔な神父が、信仰心が薄れつつある小さな社会で様々な悪意にさらされる CALVARY Movie Trailer (2014) - YouTube 懺悔室で信者の告白を聴いていた神父が、謎の男から聖職者による性的虐待経験を告白され、神父を脅迫します。その男は、自分の不幸な…