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しろうのブログ

フィクションの話

読切は面白い(2014年)②

二つ目の記事です。

 

 

アフタヌーン6月号「再来」門野民緒

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因習めいた山奥の村に伝わる、山の神を崇める祭りが22年ぶりに開かれる。
祭りの夜には住民は家にこもり、山の神が迷わず目的地の神社へと向かえるよう塀で道を作る。腹を空かせて山を下りてきた神に供物をささげ誘導し、神社へと返すことができればその後数十年にわたって山の実りが約束されるという、豊穣の祭りです。

 

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主人公はかつて祭りを経験し、神を神社へと誘う役目を果たす中で妻を失います。それが山の神によるものなのか、夜逃げか駆け落ちか、真相は不明です。そんな彼が、再び山の神を誘う役目を果たすこととなるのですが、再来する山の神に対して、彼が何を思うのか、一切の説明がなされません。一方で22年前に妻が消えた原因、さらには山の神とは何者なのかということまで明らかになっていくのですが、主人公はただ寡黙に自分のやるべきことをこなします。

 

言葉少ないなかにどろりとした執念を抱く老主人公、祭事の中で静まり返る村落の異様さ、主人公が対峙する異形の神、強烈に怪しい雰囲気をかもしながらダイナミックに動く肉体描写もあり、すごい読み応えでした。

 


ビッグコミックスペリオール「きみは友達?」鍋倉夫

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周りの人間と話さなくなる、なんだか自分のことを外に出したくなくなる、そんな灰色な時期にある主人公の田賀くんが、ふとしたことでさっぱりした性格のイケメン安達くんと仲良くなる話です。

 

田賀くんは当初こそ閉鎖的で、学校の女子からも人気があって躊躇いなく突っ込んだことを聞いてくる安達くんに引け目を感じているのですが、安達くんは顔もよければ性格も気持ちがよく、次第に心を開いていきます。

 

しかし体育の時間、安達くんの彼女が体育倉庫で野球部のエースとやらかしているところを目撃してしまい、さらに彼女は口止めとして田賀くんに誘いをかけてきます。田賀くんは女性に言い寄られ若干照れてしまい、安達くんの心を裏切っている彼女を責めることもできず、安達くんとは友達というほど仲の良くない人間だから教えなくてもと、見なかったことにしてしまいます。

 

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そこからの田賀くんの葛藤の様子がとても良かったのです。

 


月刊スピリッツ「まっしゅる~む」山崎コータ

 

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一コマ一コマ、各セリフ毎にオチがついているような完成されたネタの集合体、という印象でした。全ての絵がストーリニーのための説明的な役割を放棄しており、全てが独立して主張し合っているような、力強さがあります。

 

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ストーリー云々ではなく、好きな絵が多い漫画って感じでした。

 

月刊スピリッツ「聖戦女流棋士」かわのゆうき

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良家のお嬢様で、清廉な美貌と棋士としての資質をも兼ね備える女流棋士として注目されているヒロインが、体面と美人棋士としてのブランドにこだわる母からの束縛を脱ぎ捨てて、泥臭い命がけの将棋に挑戦する話です。

 

対戦相手は貧困家庭からかけ将棋で食い扶持をつなぎ将棋の収入だけで兄妹たちの生活を支えている、ハングリー精神の強い実力派女流棋士。才色兼備、生まれも育ちも恵まれており、将棋の実力以外の部分で世間的評価を集めているヒロインとは正反対な存在であり、ヒロインの生き方、将棋の指し方を認めず、人生をかけて将棋に勝とうとかかってきます。

 

一方でヒロインは、束縛され続けた人生への反抗として、また唯一見つけた自分だけの世界である将棋に命を懸ける決意をし、ハングリーな対戦相手にボロボロになりながら向かっていきます。

 

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そんな彼女の必死な姿、命の重みが載った一手を見て、対戦相手も彼女の将棋の強さを認める、そんなとてもいい展開です。

 

どうでもいいことですが、この二人の関係はキン肉マンキン肉マンスーパーフェニックスのそれに似ているようにも思えます。

 


モーニング「ミーコ」冬川智子

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猫が特別好きというわけでもない主人公がなんとなく気になって飼い始め、16年間主人公と同居している老猫ミーコ。彼女ができてミーコへの愛情や関心が薄れていってしまう主人公に対して、かまってもらおうと静かに主張するミーコ。二人の間に一人の女性が入り込んでしまったことでつながりが薄れ、16歳というミーコの年齢も相まって物語に不穏な空気が漂います。

 

正直私はミーコがこのまま死んでしまうのではないかと思っていたのですが、この読切の結末は違っていました。そこには猫好きなわけではなく、ただミーコという存在を愛している主人公の底なしの信頼と、彼らの間に割り込んでしまった女性のとった優しさが存分に感じられて、私が予想していたのと180度逆の優しい物語になっていました。

 

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猫愛で漫画ばかり読んでいる私にとって、「猫が好き」と「その存在が好き」と違うということを感じさせられる新鮮な漫画でした。

 


ジャンプSQ「Ice Idea」武富智

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「王」の文字が当たった人は、他の番号に当たった人にどんなことでも命令できるというアイス版の王様ゲーム「王様アイス」、それを幼馴染が一緒に食べた主人公が偶然「王」のアイスを引いてしまい、幼馴染が食べたアイスの番号を知りたくなってしょうがなくなるという話です。

 

「王様アイス」はただの駄菓子屋の一商品であって、そこには何の魔力もないのですが、幼馴染が他の男子の恋愛対象となっていること、また彼女が男子とデートをしているところを見てしまったことで、主人公の心に火が付きます。

 

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主人公も「王様アイス」に他人の心を意のままにできる力がるとは思っていません。しかし馬鹿だとわかっていながら、幼馴染に告白する勇気を得るために、自分を後押ししてくれる何かを奔走する姿はとてもかっこよい。武富智先生は、『この恋は実らない』とか『The Mark of Watzel』のような、ダメな男が女の子のために本気を出す瞬間を描かせると、本当に素晴らしいですよね。

 

続きます。