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しろうのブログ

フィクションの話

読切は面白い(2014年)③

三つ目、三只眼吽迦羅

 

 

 

ジャンプSQ「恋は盲目」藤本タツキ

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熱血な生徒会長が熱血な副会長と一緒に下校して告白するまでを31ページにわたって描いている、という読切です。

 

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キャラクターデザインはカプコン私立ジャスティス学園のようで、ギャグのテンポやノリの一直線っぷりは島本和彦先生のようで、脇役からは本多康昭先生の匂いすらする、奇特なセンスをお持ちの変わった読切でした。

 

 

goodアフタヌーン「いとしのクレメンタイン」春亜季

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父が遺したアンドロイド・クレメンタインは記憶と人間の感情を模したプログラムを自動で連関する機能を持っており、ほとんど人間と変わらない存在に近づいている。主人公はクレメンダインの頭脳プログラムを実験しながら彼女を愛するようになるのだけれど、クレメンダインの記憶の最も深いところには亡き父との思い出が鎮座しており、彼の思いはクレメンダインに届かない。

 

過去の思い出に重きを置いて、それが恋愛感情の熟成されてしまう人間らしさをクレメンダインが得る一方で、主人公は過去・アンドロイドの研究に執着し時間が泊まってしまっている。人間とアンドロイドの間で、「人間性」のようなものが逆転してしまう構図がやらしく、嫌な気持ちになりつつとてもいい話だなと感じました。

 


ミラクルジャンプ「War Pigs」藪口黒子

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英国のロックバンドBlack Sabbathの「War Pigs」という曲の中で「チェス感覚で笑いながら戦争をおっぱじめる権力の豚どもは、いつか来る審判の日に戦場という地獄を這いずる豚となり、悪魔の笑いものとなるだろう」的な歌詞があります。一方、かつて戦争を生き延びてその後哲学者となったソクラテスさんが「豚となって笑うより、人となって泣きたい」と言ったそうです。

 

ブラックサバスは戦争をやめられない権力者の愚かさを批判して「豚」と呼んでいますが、ソクラテスさんの方は少し様子が違います。

 

彼の言う「豚」とは戦争という残酷な環境に順応して、生きるために合理的な手段として殺人を肯定してしまうこと、心を殺して人間性を捨てて生きることを指しており、戦争に人生を翻弄され精神を殺されてしまう事への悲しみを表している、ように思います。少なくともこの読切はそういう解釈の下読み進めることができると思います。

 

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戦争の豚となってしまった軍医と二等兵、自分が生きるために人を殺す兵士としての生き方に慣れてしまった彼らの心の中では悲しみ苦しみがうごめいている。彼らはそれを隠すように笑います。

 

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その「豚の笑い」は外見だけで言えば、ブラックサバスの言う「戦争の豚」ですがその実は真逆で、ソクラテスさんの言う「豚」と「人」の間、「笑いながら泣いている豚」って感じで、味わい深い描写でした。

 


コミックリュウ「ルーズソックス男子」ためこう

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タイトルの通りです。高校生男子二人がこっそりとルーズソックスを履いてみる話です。制服のズボンを脱いでボクサーパンツとシャツだけになった男子高校生がルーズソックスを履く様子を見たい人にはたまらない漫画でしょう。

 

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ウルトラジャンプ「No Guns Life」カラスマタスク

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肉体を機械と融合させる「拡張技術」の進んだ世界、主人公は元軍用拡張兵士で現在は各庁舎に関する問題処理、もめ事を解決する何でも屋をやっている、リボルバー顔の渋い男です。彼は過度な拡張手術の影響で戦争以前の記憶を失っており、その穴を埋めるように他人の問題ごとに頭を突っ込んでいきます。

 

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主人公の下にユーリ・メントレという謎の人物から「妹を守ってくれ」という依頼の手紙が届きます。依頼主の正体は不明、少額ながら依頼金が同封されていたことから律儀な主人公はこの依頼を受けます。

 

ユーリ・メントレは妹・メアリーが小さいころに戦争に赴き未だ帰ってこない。メアリーは孤児となり悪徳養護施設から脱走して一人きりで生き抜いてきたじゃじゃ馬さんで、やくざに博打を仕掛けてぼろカスに搾り取られ、身売りに出されそうになっているところを主人公に助けられます。

 

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この影のある渋いコートの男性と快活な少女というブラック・ジャック的組み合わせは、何故こんなにも魅力的に映るのか、とにかく二人の掛け合いが読んでてとても楽しかったです。ストーリーも拡張メカニックのデザインも素敵です。

 

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この拡張ソバって食べ物が何か美味そうで

 

 

週刊少年ジャンプ「ネジヤマさん。」石川光貴

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親が歴史研究家で世界を飛び回っているため、一人暮らしをしている男勝りヤンキー系のヒロイン・翠と、父親がどっかから拾ってきたゴーレム・ネジヤマさんが同居する話です。

 

ネジヤマさんは目や腕からレーザーが出せる、ご近所づきあいが上手い、料理が上手くてアップルパイも作れる。翠に近づく男性には父親的なジェラシーを燃やしてレーザーで焼き殺そうとする、非常に人間臭いゴーレムです。

 

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ヒロインの翠さんはそんなネジヤマさんに多少のウザさを感じつつも拒否することなく共存しており、強烈なツッコミをかましながらさらっと対処する男気溢れる女子高生です。暴漢に拉致られパイプ椅子にくくりつけられても全く動じず、スカートなのに普通にがに股で非常にたくましい人間ですがストーリー後半で少し弱いところを見せ、その弱さをネジヤマさんが支えるという展開があって非常においしいです。

 

ネジヤマさんのゴーレムとしての過去について、少し悲しげな思い出が合うような描写があって、連載用に準備されたものなのか詳しい説明は成されておらずとても気になっています。

 

まだまだ続きます。